大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1460号 判決

以上認定したところによれば、原審における控訴人等の自白が真実に反するものとは認められないから、右自白の取消は許すことができない。しかして本件宅地並びに建物がもと訴外都丸正二の所有に属し、同人は右宅地並びに建物を所有していた当時に訴外厩城信用金庫のため本件建物に根抵当権を設定し、その後本件宅地を控訴人江原鶴吉に売渡したものであり、被控訴人は右抵当権の実行としての競売手続において本件建物を競落し、その所有権取得登記を経由したことは前記認定のとおりであるから、本件は正に民法第三八八条の適用を見るべき場合に該当し、被控訴人は同条により控訴人江原鶴吉との間において本件宅地につき本件建物所有を目的とする法定地上権を取得したものといわざるを得ない。

そこで被控訴人が右法定地上権を取得した日時について考察する。被控訴人が抵当権の実行としての競売手続において本件建物を競落したものであることは前記のとおりであるから、競落代金の支払をなしたときにおいて本件建物の所有権を取得し、したがつてこのときにおいて右法定地上権を取得するものであることは疑を容れないところ、競落許可決定の日が競落代金支払の日でないことは競売法第三三条の規定に徴しこれ亦疑を容れないから、前橋地方裁判所が被控訴人に対し競落許可を与えた昭和二十九年二月二十六日に被控訴人が右法定地上権を取得したものとなすことはできない。しかしながら民法第三八八条による法定地上権が期間の定めのないものであることは疑を容れないところであつて、借地法第一条の地上権中には被控訴人が取得した如き法定地上権も含まれるものと解するを相当とするから、右法定地上権の存続期間は借地法第二条第一項の定むるところに従つて自ら定まるものというべきである。しからば、競落代金の支払ありたる日時について主張立証のない本件にありては、昭和二十九年二月二十六日に右法定地上権を取得したとの被控訴人の主張は、同人自ら自己の取得した法定地上権の存続期間の終期を繰上げる結果を招来するにすぎず、同日被控訴人は右法定地上権を取得するものでないとの控訴人等の主張に対しては保護を与うべき理由がない。

そこで控訴人等が果して本件建物を正当に居住占有し得る権原を有するか否かを審究するに、公証人役場の確定日附部分の成立については当事者間に争がなく、爾余の部分も原審における証人都丸正二の証言及び控訴人江原鶴吉本人尋問の結果によりその成立を認め得る乙第二、第四号証及び右証人、本人の各供述を総合すると、控訴人江原鶴吉は昭和二十八年一月二十九日本件建物につき当時の所有者都丸正二との間において賃料一ケ月金二千円、毎月末日払、期間三年の約定で賃貸借契約を締結し、その後同年四月七日右都丸との間において右期間を同日より十ケ年と改めたことを認めることができるが、訴外都丸正二が本件建物につき訴外厩城信用金庫のため昭和二十六年五月二十一日根抵当権を設定し、翌二十二日その登記を経たことは前記認定のとおりであつて、同金庫が右抵当権実行のため競売の申立をなした結果、昭和二十七年十二月九日前橋地方裁判所が競売手続開始決定をなし、同月二十九日競売申立の登記を経たことは成立に争のない甲第四号証の一ないし三及び前示甲第一号証の二によつて認めることができるから、右賃貸借は右競売申立の登記後に成立したものであることは明白である。ところで抵当権者が抵当権の実行に着手し、抵当不動産につき競売申立の登記を経たときは、これと同時にその不動産の所有者はその不動産につき抵当権者の権利に影響すべき一切の行為をなすことを禁ぜられ、したがつて競落許可決定ありたる後まで存続すべき賃貸借をなし得ないこと、及び民法第三九五条の規定は不動産の所有者が競売の申立によりその行為の制限を受けない通常の場合を規定したものであることは夙に判例の示すところであるから、控訴人等は控訴人江原鶴吉の右賃借権を以て本件建物の抵当権者たる厩城信用金庫及び競落人たる被控訴人に対抗し得ないことは勿論であつて、このことは、控訴人江原鶴吉が賃借当時本件建物に根抵当権設定登記のあつたこと並びに競売手続開始決定のあつたことを知らなかつたとしても、その理を異にするものではない。

(柳川 中村匡 古原)

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